県広報コンクールの開催
いかに伝えるか 静岡市の「静岡気分」は、そのほかの市の広報紙とは別のタイプに分類されているように感じた。「静岡気分」は数ページにわたる特集はない代わりに、“情報紙”に徹し、タブロイドの大きさと一覧表を生かして見やすく、各種の情報をつかみやすい。記事の企画性が入る余地が少ないとも言えるが、スタイルが完成されている。広報紙の持つ、行政情報を着実に市民に伝える使命を考えれば、これはこれでありだな、と感じた。 このほか、災害伝言ダイアル171、年末年始の業務カレンダーなど視認性が優れ、ひと目で内容を把握できる「広報こさい」なども印象に残った。これからの広報紙の姿として、まず図表やイラストで一瞬にして情報を理解し、さらに必要であれば記事を読んで詳細を知ることができるような工夫をさらに進めてほしい。そのためには視覚に訴える、効果的な色使いの研究も必要だ。 市民に考える機会を 特集は、戦後70年、世界文化遺産に登録された韮山反射炉、放送が決まった大河ドラマにちなんだものなどタイムリーなテーマが目立った。一方で、「広報しまだ」の「子どもの貧困」は社会に広がりつつある問題を真正面から取り上げた骨太の特集だった。市の担当者のみならず、民生委員、NPO役員、保育士、高校生、教諭ら立場の違う人たちがそれぞれの取り組み、意見を並べ、全体としてメッセージ性のある力作。市民が問題を考えるきっかけになるのではないか。表紙、写真、言葉、レイアウトにも工夫を感じた。 また、「広報いずのくに」も「明治の産業革命遺産」に決まった韮山反射炉を単なる慶事に終わらせることなく、「責任」をキーワードに課題や未来を考えさせる内容だった。高校生たちに市の活性化を語らせた「広報沼津」、中学生たちからふるさとの課題を聞き出した「広報菊川」の特集も印象深かった。貧困、人口減少、地域活性化などは日本全体が抱える問題だが、地元に落とし込んでどう対応するか、行政と市民がともに考えを出し合う紙面づくりもこれからの広報紙が求められる役割の一つではないだろうか。 [中日新聞静岡総局長 澤田 敬介]
どの市町も内容的には似てしまうのはいたしかたない中で個性的で目を惹くデザインを期待して審査させていただきました。全体的には互いに他の市町を参考にし合う面もあるのかデザイン的にも平均化傾向でした。 フルカラー、2色、単色、ページ数の違い等同一の基準での評価は難しいと感じましたが、とにかく目を通してみて更にページをめくりたくなった冊子を直感で評価しました。ですので、本文が単色でも表現力のあるレイアウトと文章・写真であればフルカラーでページ数のあるモノより高評価をつけています。 広報紙の読者は他に類をみない幅広い年齢層であり、できるだけ多くの層に内容を伝える必要があります。正確に伝えることも重要ですがまずは見て、読んでもらうための手法であるデザインを誰もが共感する「きれい」「楽しい」と思うカタチを個性的に表現しながら作り込んでいって欲しいと思います。 [リアリスティックデザイン代表 松永 直人]
先ずは、日々、広報活動に従事されている皆様に、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ほんとうにご苦労様です。ありがとうございます。 日々、急激に変化する情報化社会、グローバル社会のなかにあって、また、様々なリアルタイムに情報を届けるメディアを市民が使いこなすなかで、紙媒体として何を切り取り、何を届けるかは、大いに苦労されるところでしょう。 市広報紙をよりレベルアップさせるのは、同じ広報紙を研究するよりも、SNSなどの媒体の情報の扱い方、語り方、見せ方にヒントがあるのかもしれません。あるいは、それらの媒体と相乗り入れる戦略です。新聞や雑誌は広報とは性格が違いますが、レイアウトやターゲットに対しての見せ方、語り方には、一日の長があります。特に、最近の新聞は膨大な情報をいかに直感的に、かつ正確に理解してもらうかに工夫があります。 ヒントは他の媒体にあり。視野を広く持ち、他の経験と智慧に学ぶことを忘れてはいけません。 [静岡大学人文社会科学部客員教授・教育学部特任教授 平野 雅彦]
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