県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
産経新聞社静岡支局長 深山 茂
リアリスティックデザイン代表 松永 直人
静岡県分野別広報アドバイザー 北村 秀実
※審査委員の寸評は順不同です
◇このたびは、審査の機会を与えていただき、ありがとうございました。 今回、応募された21作品は、いずれの作品も、審査の評価点となる企画、文章、デザイン・レイアウトのレベルが高く、前向きな意味で、非常に悩ましい審査をさせていただきました。粒ぞろいの作品の間で、当然評価は僅差で伯仲したものとなり、いずれの応募作品も担当者様のご尽力のあとが伺えました。 なかでも、掛川市「広報かけがわ」7月1日号では、行政広報にふさわしい落ち着きある色調や文字フォントが、効果的な見出しの使い方とともに光っていました。また、湖西市の「広報こさい」3月号では、「市民記者」の起用や職員派遣先をリポートする「頑張ろう東北」の展開から、限りあるマンパワーや資源を突破するご担当者の熱意と工夫がうかがえました。 今後は、培われた編集力をさらに活かすとともに、より読み手の変化に寄り添い、対応する切磋琢磨にも期待いたしております。例えば、 1)情報弱者に対する配慮が何より大切であることは、今後も不変です。ただ、生活者のスマートフォンに対するメディア接触習慣(ニールセン調査によると、2016年4月時点で、スマホ利用者数は5496万人、1人あたりの1日の平均利用時間は2時間11分)の台頭やスマホで人々に閲読されやすい記事フォーマットや文字数データなどを参考にすると、より若い世代にも読まれやすい紙面づくりやレイアウトの参考になるのではと思いました。 2)「広報紙」以外にも多彩に増す市民との情報接点のなかで、「広報紙」をどう位置付けて活かすのか、行政について市民が見聞きする情報接触の流れ、動線のどこに、「広報紙」が入っているのかを再考すれば、より一層他のメディアとの役割分担や連動などの可能性を検討できるかもしれません。 3)多文化共生はじめ、多様な読み手への配慮を「広報紙」にどう取り入れていくのか、今回の21作品いずれも、日本語以外の読者への配慮は殆ど講じられていない印象を受けました。また、いくつかの作品では、表紙内にある目次が、カラー写真の上に白抜き文字で表記されており、多様な読み手にとっての視認性、読みやすさは、検証済みなのか、少々気になりました。 こういった変化に対応しつつ、皆様の「広報紙」が、ふさわしい進化をとげていくことを願っております。 ◇どの広報紙も読んでもらう工夫、情報を分かりやすく伝える紙面作りをしており、内容が充実していた。それぞれの自治体の課題や特性に焦点を当てた企画はどれも読み応えがあった。企画の斬新さ、文章の分かりやすさ、読みやすいレイアウトも大変高いレベルで、大きな差はなかった。特に写真の使い方が秀逸だった。高齢化社会を意識しているためか、文字が大きく読みやすいものが多かった。 あえて気付いたことを挙げると、見出しの大きさは全体的にもっと強弱を付けた方がさらに読みやすくなるのでは。色使いも多くの色を使いすぎ、逆に読みにくくなってしまっているものが散見された。情報も詰め込みすぎると散漫になってしまうようであり、ある程度絞った方がより読者に親切になると思われるものがあった。 ◇昨年に引き続き、今年もどの市町も内容的には似てしまうのはいたしかたない中で個性的で目を惹くデザインを評価の基準に審査させていただきました。(以下は昨年の流用) フルカラー、2色、単色、ページ数の違い等同一の基準での評価は難しいと感じましたが、とにかく目を通してみて更にページをめくりたくなった冊子を直感で評価しました。ですので、本文が単色でも表現力のあるレイアウトと文章・写真であればフルカラーでページ数のあるモノより高評価をつけています。 広報紙の読者は他に類をみない幅広い年齢層であり、できるだけ多くの層に内容を伝える必要があります。正確に伝えることも重要ですがまずは見て、読んでもらうための手法であるデザインを誰もが共感する「きれい」「楽しい」と思うカタチを個性的に表現しながら作り込んでいって欲しいと思います。 さて、今年の21誌ですがやはりコンテンツ(記事・情報)的には行政の広報紙として突飛な企画はおよそ控えられ、従来の域を出たものはありませんでしたが昨年の私の個々の寸評を参考にしていただけたと思われるようなデザイン的なスキルアップが何誌かに見られました。(気のせいかもしれませんが)ですので、あくまで個人的ではありますがとても嬉しく、良い傾向にあると感じました。私の評価が正解かはわかりませんが2年目にしてそうした変化が見られたことは各市の「より良い広報紙づくり」への真摯な取り組みが読み取れて「伝える」仕事に携わる1人として頼もしく思いました。 |