県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
静岡新聞社編集局長 植 松 恒 裕
静岡デザイン専門学校 本 野 智 美
静岡大学教授・静岡県広報アドバイザー 平 野 雅 彦
◇広報紙を市民に手に取ってもらうためにはフロント面と特集の充実が不可欠。その点で広報紙によって大きな差があった。写真そのものも大事だが、使い方にも工夫が必要。深刻なテーマを読みやすく、親しみやすい形にまとめた広報紙も目立った。そうすることで、その後に収録された行政が市民に伝えたい情報も伝えることができるのではないか。ただ、決められたスペースに情報を詰め込むだけでは読んでもらえない。そうした意味でも島田市、伊豆市の特集は秀逸だった。 ◇今回の審査を通して感じたことは、「時代が求めるテーマ」。 キーワードを挙げるとしたら“個性”“違って当たり前”です。“幸せの基準は一人一人違う”など。そして、それらをみんなで考えて行く時代であるということでした。 いままではわかりやすい平均的な人物像を全体の目標として打ち立て、その平均から上か下かが価値基準でしたが、時代の変化とともに平均に合わせる傾向は薄れ、“違って当たり前”という意識が普通の感覚になってきていると思います。 今の若者はこのことは肌感覚レベルで常識な上、若干、個人に任せすぎて、守らなくてはならないことと、自由でいいことの分別がつきにくくもなっています。 そんな急速に変化しつつある次世代へ向けて市政はどう向き合うか。そんな問題提起が、今回の審査対象の特集に多く見受けられた気がします。 良いことは残す、悪いことは直す、これらをすべての世代へ伝える手段やきっかけとして、市の広報紙の役割は今後ますます大きくなるのではないでしょうか。 毎号の出版は大変な作業でご苦労も多いかと思いますが、これからも地域貢献の一環としての視点で、市の広報紙を応援して行きたいと思います。 審査におきましては、各地域の特性がよくわかる特集記事も多く、大変楽しく拝見させていただきました。今年も審査を通し、有意義な時間を過ごせた事に感謝いたします。 ありがとうございました。 ◇普段から、多忙を極める中、広報の仕事に携わり、丁寧な仕事をしてくださっていることにまずは敬意を払いたい。一方で、がんばってくださっているが故に、もったいない。志、力の入れどころを含め、こうしたら更によくなる、ということを立場上お伝えしておくことをお許し願いたい。 広報紙では、情報の発信者が、いま、なぜ、その情報を伝えたいのかを自問自答することが大切である。つまりテーマ設定の問題である。思いつきや漠然とした企画ではメッセージが伝わらない。思い付きとアイデアは次元がまったく違う。切り口を見つけてから勝負である。旬の情報をやさしく、深く、そして自分ごととして受け取ってもらえているかに注意を払いたい。「いま・ここ」の情報に、普遍的なテーマを絡めて読み応えのある記事を提供できるのかといった視点こそ重要である。 デザインの仕事とは、レイアウトすることだけをいうのではない。かわいいデザイン、かっこいいデザインは、それはそれで目を引くかもしれないが、最も重要なことは、超情報化社会にあって、情報があり過ぎて人々が混乱していることをうまく整理して、上手に案内することにある。 また、表紙の写真やレイアウトには力が入っているが、開き進めてみると、従来とあまり代わり映えしないというケースが散見された。 全的に文章の工夫が見られなかった。広報紙において、文章はけっして奇をてらう必要はないが、同じ言い方でも、もっと読み手に伝わる工夫がないか常に検討していく必要がある。その詰めが甘く感じた。特に見出しの一文は、何度も推敲が必要だろう。 |