県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
NHK静岡放送局放送部副部長 高 柳 哲 也
SATV報道制作局長 小野田 光 利
静岡文化芸術大学デザイン学部教授 古 田 祐 司
◇コンクールに参加された自治体の皆さま、お疲れさまでした。 さまざまな工夫を凝らした映像作品があり、皆さまの「地域の魅力を発信したい」という熱意を感じました。出典されたものの中には、地域で実際に放送されている番組であったり、ネット上にアップされているものであったり、スタイルや映像の長さもさまざまありました。こうした映像にかけられるコストや時間などは、各自治体の事情によって大きく異なることも理解しております。そうしたものを一律に審査することの難しさを痛感いたしました。わたしは、今回の審査にあたり「伝えたいメッセージ」が「魅力的で、きちんと見ている人に届けられているか?」といった観点を重視しました。 見ている間、映像は立ち止まってくれません。普通であれば、繰り返し見ることもなく、映像は「一期一会」です。映像を初めて見る人たち、基本情報もない人たちに「どれだけ届けられるか?届いているか?」という視点が欠かせません。生業として放送に携わるわたしどもも日々、意識していることですが、実現するのは容易なことではありません。作りに没頭すればするほど、受け手のことが見えなくなってしまうものです。のめり込んだが故の「落とし穴」に落ちないように、常に「きちんと届けられているか?」という視点を意識することが、「伝わる作品」作りの一助になる…そのことを自戒の念も込めて、皆さまにお伝えしたいと思います。 ◇いずれも力作ぞろいで、作り手の地域への愛情を感じました。 表現の方法にも個性や工夫が見られ、地元の魅力を内外に効果的に発信したいという意欲が伝わりました。一方で誰に何を伝えたいかがあいまいだったり、全体にメリハリを欠く作品も一部に見受けられました。 広報映像は、伝えたいことが明確であること、分かりやすい表現であること、印象に残ることが大事だと思います。さらに、作品の独創性も重要です。 撮影や編集の技術はレベルの高いものが目立ちました。入賞作品は特に映像に力強さを感じました。その地域ならでは発想で、個性的な映像表現にチャレンジいただければと思います。 ◇今回特に感じたのは、既存の番組か映像パッケージのスタイルをまねた(あるいは下敷きにした)まとめ方から卒業してはどうだろうか?ということです。 予算、スタッフ、機材、スキル経験に制約がある中で既存の番組らしきものを追い求めても、「不足」と「未熟」ばかり見立ってしまうのは避けられない。だとすれば、その制約を武器にした、企画と演出の可能性を考えては、という提案です。 プロの役者を使う予算がないとき、素人にプロのまねをさせる代わりに、素人でしか絶対に出せない反応のし方を生かす企画と演出があるのではないか? 重くて高価な撮影機材でなくても、いやむしろカバンの中に入れて持ち歩けるチープなカメラだからこそ切り取れる日常の光景だってあるはずです。 |