県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
読売新聞社静岡支局長 向 井 太
静岡デザイン専門学校常勤講師 本 野 智 美
静岡大学人文社会学客員教授/教育学部特任教授 平 野 雅 彦
◇予算、人員が限られた自治体広報紙だが、いずれも町、ふるさとに対する愛着を感じさせるものに仕上がっている。驚いたのは、どれもカラー頁をふだんに使い、写真もきれいであること。私が自治体の取材を担当していた約30年前と比べると、隔世の感があり、行政サービスの向上の表れでもあるのだろう。 「広報ながいずみ」の特集「猫を考える」はまずタイトルに意表をつかれた。長泉町固有の問題ではないはずだが、それをあえて取り上げた心意気が素晴らしい。フロントの写真もかわいらしく、デザインや構成、読みやすさなど全体を通してレベルは一段上と感じた。 「広報よしだ」は専任で1人が担当しているそうだが、どの写真もイキイキとして上手だ。「人生100年時代」のボランティア時代を特集したが、ていねいに取材してあり、レベルが高く内容も濃かった。 町の広報紙であるから当然、行政情報の発信は不可欠だが、そのほかに、どれだけいい話題、役に立つ情報、楽しい出来事を掲載できるかが重要だと思う。字詰めを変えたり、フォントの種類、大きさを変えたりするだけでも、ぐっと読みやすくなることがある。新聞社に勤める我々が「やられた」と思うような話題をもっともっと発掘していただけたら、うれしい。 ◇町の広報紙の役割について、今年も色々考えさせられました。 季節ごとの恒例行事に加え、町に起こった新しい出来事、新しい仕組みの解説など、伝えるべき様々なテーマがこんなにも毎月、それぞれの地域にあるということです。当たり前かもしれませんが、改めて「そこに暮らす人々とともに町自体も生きている」と実感しました。 様々な年代や環境の人々が必要としている情報を、精査し研究し取材し、そして広報紙という形にすることは、人々の生活を支える本当に意義のある活動だと思いました。 これからも地域貢献の一環としての視点で、町の広報紙を応援して生きたいと思います。 審査におきましては、各地域の特性が良くわかる特集記事も多く、大変楽しく拝見させていただきました。審査を通し、有意義な時間を過ごせたことに感謝いたします。 ◇広報紙で重要なのは、情報の正確性と鮮度である。それは取りも直さずテーマ設定の問題である。漠然とした企画ではメッセージが伝わらない。旬の情報を深く、やさしく、自分ごととして読めるように記述することに注意を払いたい。「いま・ここ」の情報に、普遍的なテーマをいかに絡めて読み応えのある記事を提供できるのかといった視点こそ重要である。特集を組む際には、参考文献を記載したい。それによって、記事に信憑性が出る。 例年お伝えしていることだが、デザインの仕事とは、レイアウトすることだけではない。すてきなデザイン、かっこいいデザインは、それはそれで重要な視点だが、留意すべきは、超情報化社会にあって、読み手が混乱し、正確な情報に辿り着けないという前提を理解することだ。作り手はそこを先読みして、膨大な情報が絡み合って混乱している状況を整理整頓して提供するが大切だ。最近、新聞にはそこを改善するために工夫が随所に見られるため(主に大量の情報を一瞬にして解らせる、インフォフラフックの採用)、参考にするとよい。 全国で受賞している広報紙の分析が効果的だ。審査委員がどこをみて何を評価するか、それを想像してみるといい。 |