県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
読売新聞社静岡支局長 向 井 太
静岡デザイン専門学校常勤講師 本 野 智 美
静岡大学人文社会学客員教授/教育学部特任教授 平 野 雅 彦
◇農協や商工会議所などの団体広報紙は、広く住民を対象とした自治体広報紙と比べて難しい面があるのだろう。基本的には、団体の会員向けのものであるから、内容も専門的になる。一方、農協であれば、まず生産者が登場し、季節の農作業に対する解説があり、産地の野菜を使ったレシピを掲載するなど、どうしても内容が似通ってしまうようだ。表紙のデザインは外注してプロが担当するケースが多いかだろうから、やはり個性も出にくい。いかに他と差別化するかが見せ所だ。 SNSに関する注意を促す記事を掲載したり、農協の食育活動を取り上げたり。あの手この手で読者の興味を引き付けたものもあれば、若者を意識したカラフルな作りを目指しているものもある。情報ステーション「Oigawa」は毎号テーマ作物を決めて、表紙はその作物を使った料理の写真。これがまたおいしそうで、おしゃれな感じを醸し出している。紙も上質だ。内容は他の団体と大きな差がないはずだが、色使いなどもこなれており、読みやすかった。 団体系の広報紙は専門色が強い分、とっつきにくい面もあるが、実は一般の人が読んで役に立つ情報も多い。予算、担当者の人数、ページ数は様々でも、それぞれに「多くの人に読んでもらいたい」という作り手の熱意を感じた。 ◇どの分野の広報紙も写真が素敵で、どれも魅入ってしまいました。 被写体のみなさんも、良い笑顔や時には真剣な表情を、カメラの前で見せてくれています。そのような表情を引き出す信頼関係を普段から築いていらっしゃるのだろうな、などと思いながら読ませていただきました。 専門的なことも知識として持っていなければ記事として文章にまとめることもできませんし、広報紙に携わるみなさんの努力とご苦労には毎回頭が下がります。 それぞれの仕事の価値をみんなで共有し合う場が、団体広報紙なのかも知れません。仲間として共感する、また家族の仕事を理解することも含まれるとしたら、本当に意義のある編集作業だと思います。 広報紙の出版は大変な作業でご苦労も多いかと思いますが、これからも人々を繋げる役目を担うみなさんを応援していきたいと思います。 様々な分野にふれるチャンスをいただき、すべてを興味深く拝見させていただきました。審査を通し、有意義な時間を過ごせたことに感謝いたします。 ◇広報紙で重要なのは、情報の正確性と鮮度である。それは取りも直さずテーマ設定の問題である。漠然とした企画ではメッセージが伝わらない。旬の情報を深く、やさしく、自分ごととして読めるように記述することに注意を払いたい。「いま・ここ」の情報に、普遍的なテーマをいかに絡めて読み応えのある記事を提供できるのかといった視点こそ重要である。特集を組む際には、参考文献を記載したい。それによって、記事に信憑性が出る。 例年お伝えしていることだが、デザインの仕事とは、レイアウトすることだけではない。すてきなデザイン、かっこいいデザインは、それはそれで重要な視点だが、留意すべきは、超情報化社会にあって、読み手が混乱し、正確な情報に辿り着けないという前提を理解することだ。作り手はそこを先読みして、膨大な情報が絡み合って混乱している状況を整理整頓して提供するが大切だ。最近、新聞にはそこを改善するために工夫が随所に見られるため(主に大量の情報を一瞬にして解らせる、インフォフラフックの採用)、参考にするとよい。 全国で受賞している広報紙の分析が効果的だ。審査委員がどこをみて何を評価するか、それを想像してみるといい。 |
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