県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
朝日新聞社静岡総局長 田 中 敏 行
静岡デザイン専門学校 常勤講師 本 野 智 美
静岡大学人文社会科学部客員教授・教育学部特任教授
平 野 雅 彦 ◇かつて自治体の広報紙というと、私には自治体のお知らせが無味乾燥に網羅されていて、読み応えなどとは無縁というイメージがありました。しかし、今回、拝読した広報紙は、いずれも読み応えがありました。作り手の担当者も相当に力を入れており、様々に工夫を懲らしていることがよく分かりました。写真も素晴らしく、迫力もあり、プロの仕事を実感しました。 全体的にはとても水準が高いのですが、個々に見ていくと、自治体ごとに違いや若干の差も感じました。その違いや差とは何か、どこから生じるのかと考えた時に、読み手への向き合い方にあるのではと思いました。広報紙であるからには、広く知らせることが第一義であることは当然のことです。ある施策や事業、サービス、施設、予算などを役所から市民に伝えるというのが広報紙の役割です。その上で、さらに読み応えのある広報紙とは、一方的に伝える、お知らせするだけでなく、一緒に考えていく、どう読まれるかを常に意識することだと思います。 審査した中には、読み手とともに考える、考えてもらいたいという姿勢が明確な広報紙がいくつかありました。従来の自治体の広報紙とは趣の異なった紙面です。そんな広報紙を発行している自治体は魅力的です。ちょっと出かけてみたい、あるいは住んでみたいと思わせます。月1回とは言え、新聞と違って市内全戸に配布されるわけですから、影響は絶大です。そこに作り手がどんな問題意識を持って、何をどのように発信していくのか。伝え方は大事です。テーマは良いのに、あれもこれもと盛り込みすぎて、字も小さく、結果的に読みづらくなってしまった例もあります。 また、大変細かいことで恐縮ですが、掲載した写真の説明は必要ですし、アンケートを紹介する際には、%だけでなく、調査対象数や回答の実数もほしいところです。せっかくの特集ならば、表紙の写真も特集に合わせた方がインパクトはあるでしょう。 今度は、どんなテーマを取り上げて、どういう内容の紙面を作るか。今後も、大変楽しく、かつ責任や反響も大きい広報紙の編集・発行という仕事をみんなで知恵を出し合いながら、取り組んでください。楽しみにしています。 ◇広報紙の審査を通して時代の変化を追う、感じる、そんな気がしています。今年多く見受けられたテーマは、“多文化との共生” “男女共同参画” “障がいを持つ方々とのつながり” “子供たちの未来をどう作るか、守るか” “最期の時をどう迎えるか”などでした。 どれも時代の中で重要視されるテーマであると共に、国連サミットで採択された『SDGs〜持続可能な開発目標』をアウトラインとした活動目標を目指しているものも多く含まれます。やはり今後10年はSDGsを中心に環境・社会・経済の問題を念頭に置いた課題発見力と、さらにその課題を解決できる次世代の人材育成にどこも力を入れ、広報紙もいち早く敏感にそれを感じ取り特集テーマに選んでいる、そんな思いを抱きながら読ませていただきました。 さらに、今年は2020東京オリンピック&パラリンピックイヤーでもあり、県下各市へ合宿先として世界各国の選手団が訪れ、地域とのコミュニケーションが思っていた以上に活発に行われていることも改めて知ることができました。 また、どの広報紙もクオリティが高く、企画力、取材力、デザイン力まで、総合的なレベルは年々上がっていると感じています。 広報紙に携わる方々の毎号のご苦労は計り知れませんが、成果としての「伝わる広報紙」は確実に実績を残していると思います。たくさんの広報紙の向こうにたくさんの笑顔がある…皆様の活動の価値を再確認いたしました。 審査におきましては、静岡各地の特性を比べながら楽しく拝見させていただきました。審査を通し、有意義な時間を過ごせた事に感謝いたします。ありがとうございました。 ◇まずは、日々の広報活動における各団体・組織のご努力に感謝したい。何よりも各取組が県全体の広報活動の底力をアップし、気運を高めるからである。施策にはいくつも大切な取組があるが、広報活動は、自分たちが何を考え、何を行っているのかを伝えることも含め、地域全体の状況、活動、課題を俯瞰できる最も優れたコミュニケーションツールである。その活動に関わっていることにプライドを持っていいだろう。 情報過多の現代社会において、広報紙の読者である会員や地域住民が今、何(課題)が整理できずにいるのかを推察し、そこを整理して、理解しやすく料理して伝えるのが広報の最大の役割である。また同時に大事なのか、意見の多様性を提示することである。結論を急がず、読み手と一緒になって考える、その舞台としての広報紙であるという位置づけは大事である。場合によっては広報紙をテキストに実際にイベントや講演会、勉強会を実施することが考えられよう。現在、広報紙の多くが、イベントや講演会、勉強会と別物になっている。大事なのは「テキスト(広報紙)」と「活動」をシームレスにしていくことだ。もっと意識的に一体化させるのである。 何でもかんでも検索すると一応の答えのようなものが見える社会において、それでも広報紙を発行する意義を組織やチームで議論したい。捨てられない広報紙とはただかっこよく見栄えがいいもの(もちろんある意味でこれも大事)だけではないはずだ。 また、「デザイン」といったときに、レイアウト、書体、ポイント数、写真のトリミング、イラスト等々をイメージするのが一般的だが、現在では「デザイン」の考え方そのものが変化してきている。デザインとは、地域や組織の課題を解決するための方法の総体のことである。de + sign → 今あるカタチや計画、仕組みをいったん(勇気をもって)解体して、再構築することだ。 |