県広報コンクールの開催
〈審査委員〉 産経新聞 静岡支局長 青山 博美
全日本写真連盟静岡県本部委員長 藤田 寛司
静岡県広報業務アドバイザー(デザイン) 八木 朋美
◇紙媒体には情報を伝えることとともに、記録するという役割が求められます。これは雑誌や新聞などとともに、広報紙にとっても重要な役割かと思います。特に広報紙はその性格上、市町民に対して読者の興味如何に関わらず必要な情報を伝達し、記録することが求められていることでしょう。 今回応募された組み写真からも、そうしたことを強く意識した力作が多々ありました。印象に残った傾向として、防災などに関する情報を組み写真の活用で伝える試みがあります。個々の写真作品としての芸術性などではなく、こういう時はとうしたらいいのか?をわかりやすく伝えるために写真を活用する、という取り組み。沼津市の作品はその一つの例でした。これがすべて文章だった場合、一部イラストなどを加えた場合などを想像、比較すると、写真の活用は効果的かと思います。開拓の余地を感じるとともに、可能性のある取り組みでした。 一枚部門でもご指摘いたしましたが、長引く新型コロナウイルス禍が収束し4年ぶりに祭りやイベントも再開。活気が戻ってきました。これを機に、組み写真で地元の貴重な文化を伝えよう、という試みも印象的でした。伊豆の国市や函南町、川根本町などの作品は、イベントの歴史や伝統などはさまざまですが、住民にその意味や意義、どんなものなのかを伝え、地域の誇りとして盛り上げていこう、という意識を強く感じます。 富士宮市の作品のように、写真作品として優れたものもありますが、写真機材の発達に伴い高品位な写真は実に手軽に撮れる時代です。そしたものを組み合わせることで、災害時の安全確保や未来に残したい文化を伝えていく。そんな木鐸としての広報紙の中で、写真の持つ力はいかんなく発揮されていると感じました。 ◇コロナが5類になって祭りやイベントが元の様に開催出来るようになった。このこともあり祭りやイベントの写真が多かった。またマスクが取れたことにより、豊かな表情も撮れるようになった。さぞ皆さんの取材も楽になっただろうと想像する。 またカメラの性能が良くなったので、フラッシュ無しの夜の撮影が増えている。撮影する行動半径も増えたことと思う。ここで気を付けなくてはイケないのは、ISO感度を上げ過ぎないことだ。カメラにもよるがISO400を常用とし、800位からはノイズも増え画質もどんどん悪くなる。10000以上の設定も見受けられたが、上限設定が出来るので、せめて6400止まりとしたい。 次に組写真についてである。 写真をただ並べただけに終わってしまったものが多かった。それも小さく縮小して。やはり主題、主役を大きく扱い、説明的に加えるのであれば出来るだけ枚数を絞って加えていくと、メリハリが出て良いものになって行く。 また写真が余り小さすぎると読者は見ようとしないで、とおりすぎてしまう。中には撮って来たものを全て載せようとしている組写真も散見された。セレクト、セレクトである。 組写真とはストーリー(起承転結)があり、それぞれの写真の相乗効果があり、群れて初めて一枚では表現できないものが出来る。ただ多くの写真を並べるだけが組写真では無いので少し勉強してほしい。 最後に皆さんの写真を拝見して「うまいなぁ」と思うものが多くなってきている。これからも頑張って写真を“いっぱい“撮ってほしい。いっぱい撮ると中には良い写真が、きっとあります。 ◇一枚写真部門と同様に、コロナ以前の行事が復活した喜びや、その行事の魅力を表現する写真が多く見受けられました。審査を通して、組み合わせる写真の選択と、それらの紙面での扱い方で、組み写真の与える印象が大きく変わることを再認識しました。 対象への想いが溢れてしまう為か、掲載点数を欲張り過ぎてしまったり、紙面でのトリミングが対象に寄り過ぎてしまったりする傾向が見られました。写真を選択する際は、表現したい意図を明確にした上で、客観的な視点を忘れずに選択するよう心掛けると良いでしょう。 また、個々の写真の魅力だけではなく、各写真の紙面での構成の仕方や役割、紙面全体から与える印象と合わせて検討することも大切です。高評価を得た広報紙は、これらのバランスが秀逸でした。広報紙を作成する方の想いや意図が、より届く写真・紙面が作成されることを願っています。 |