県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
中日新聞社 静岡総局長 榎本 哲也
ピースデザイン代表 遠藤 次朗
静岡大学人文社会科学部客員教授・教育学部特任教授
静岡県分野別広報アドバイザー(広報誌企画) 平野 雅彦 ◇町広報紙を読むと、その町役場と町民との距離感、町役場がどれだけ町民と身近に接しているかが伝わってきます。職員のみなさんが日ごろから町民と接している町役場の広報紙ほど、原稿からは町民の生の声が伝わってくるし、写真は生き生きした町民の表情がとらえられています。 写真、特に表紙写真のレベルの高さには驚きました。プロ級の腕前もいます。私は東京で長く記者をしていましたが、東京23区も区役所によって、広報写真の技術が飛び抜けてうまい区があります。これはたまたま写真がうまい職員がいるのではなく、広報写真がうまい区役所は10年前、20年前から伝統的にうまいです。農業や地場産業と同様、役場の広報も、その技術を後輩職員に伝承していってほしいと思うし、「うちには写真がうまい職員がいない」と思うのではなく、そう思っている職員の方ご自身が、ぜひ、どうすれば写真がうまく撮れるかを日ごろから模索してみてください。今のカメラは性能が良く、スマートフォンでもかなりのレベルの写真が撮れます。あとは技術というよりも、フレームの隅々にまで気を配って、撮影対象の人に遠慮せず(遠慮があると写真もだめになります)、何枚も撮影してみましょう。撮影はズームに頼らず、一歩前へ出て撮影しましょう。 原稿は文章のうまさよりも、誰に伝えるのか、伝える相手の顔がはっきり想像できる人は、うまく書けると思います。これも上記と同じですが、役場の皆さんが町民の皆さんとどれだけ距離が近いかで、原稿も優劣が決まってくると思います。町民と日ごろからふれあっていれば、いろいろなお話を日ごろから交わしているので、取材時はより深い話が聞けると思います。 私は長年新聞を作っていて、特に地方版では、大きなトップ記事よりも、小さな情報欄のほうが読者にとって大切な情報が多いと思っています。町広報紙でも同じことが言えると思います。巻頭特集は大切ですが、後ろのほうに載せる暮らしの情報など、町民に役立つ情報を一つでも多く載せるのは大切です。そのためにも、役場の各部署に日ごろから「何かないですか?」と聞いて回り、町民に「どんなことが知りたいですか?」と聞いてみるこまめさを持ってほしいと思います。 ネット全盛の時代、行政情報もネットで載せればいいと考える自治体も多いですが、町民にとって何が大切な情報かを、町民目線に立って考える広報担当職員が、情報の取捨選択をして、役立つ情報をぎゅっと厳選した町広報紙のほうが、すべてが網羅された町役場のホームページよりも、はるかに貴重だと思います。ぜひこれからも、手に取れる広報紙を発行し続けてほしいと思います。 ◇地域の魅力を「人」や土地の歴史や文化から伝えたりとそれぞれに工夫されているなと感じました。コミュニティの大小はあるにせよ必ず町を盛り上げようと尽力し笑顔で頑張る人々がいます。そして若者も頑張っています。 そんな地域の「人」の魅力をどうしたら伝えられるかを考えてみると良いと思います。「報告」や「連絡」に終始するということに陥りがちなことから脱却するためにはやはり「人」の魅力から広げていくのも良いのかもしれません。 全体的にデザイン性はとても良いと思いました。見やすさも考慮してきちんと練られているなと感じました。あとは内容の企画ですね。これからも「地域」「文化」「産業」そして何より「人」の魅力を多くの方に伝えられるように頑張ってください。 吉田町、小山町、函南町が見せ方も良く安定しています。記事内容、企画で差がつきました。地域の「笑顔」を発信する内容が好まれると思います。 ◇全体としてどの広報紙の企画も、コロナ禍において、町民生活へのいくつかの配慮がみられた。町民や高校生とのコラボが際立ったのは、こんな時期だからこそ人と何かを一緒に行うことを強く押し出すことで読み手に安心を与えるからだ。 情報やイベント等の処理は、どの広報紙もまだまだ改善の余地がある。読みやすさを追求するために、四角にマスを切って情報を入れていくことは確かにその課題を端的に解決するだろう。だが、それだけでは「読む楽しみ」は生まれにくい。そこを解決していくのがデザインの力である。もっと楽しみながら読み続けられるレイアウトとはどうあるべきかを問い続けることが大切である。他の雑誌、特に広報とは遠いファッション誌などを参考にするのもいい。 |