県広報コンクールの開催
〈審査委員〉
毎日新聞社 静岡支局長 銅崎 順子
全日本写真連盟 静岡県本部委員長 中村 明弘
(有)アドクック 代表取締役
静岡県広報業務アドバイザー(デザイン) 前田ミネオ ◇広報紙の表紙になる被写体を探すためにカメラを持って各地を歩き回る職員の姿が浮かびました。各市町の良さを市民町民に伝えられているなあと思いました。 コロナ禍ということで、メッセージ性の高い作品もありました。伊東市の「広報いとう」や清水町の「広報しみず」はキャプションに職員の気持ちがこもっているよい作品です。函南町の「広報かんなみ」はコロナに限ったことではないのでしょうが、「思いを届ける」という素直なキャプションと少女のまっすぐな瞳が、見た人の心に残る作品になっています。 王道の子供たちの笑顔の写真は、ギスギスした世の中のことを忘れさせ、ほっとさせてくれます。被写体の子供たちと撮影者の近さが感じられる作品が多く、お互いにリラックスして撮影できたのだろうと想像させます。富士市の「広報ふじ」に登場した、上手に食べたサンマの骨を見せびらかす女の子はとても印象的です。 名所・旧跡の写真は静かで落ち着いていて、カレンダーに使いたくなるような写真がそろいました。だからこそ、どのように切り取るのか、撮影時間やレイアウトなどの計算が必要になるのだとあらためて感じました。島田市の「広報しまだ」は市内の名所で人物を上手に撮影しています。 これからも人物や風景をバランスよく撮影してください。表紙写真の力は大きいと思います。手に取りたくなる、読みたくなる広報紙を作っていってください。 ◇ほとんどノートリミングで表紙に使用されている写真が多くありました。仕上がりをイメージしつつ、取材をしていく力を持つ方が多く見受けられます。もちろん、より効果的にトリミングすることで、いっそうよいものになるのも事実ですし、その必要性は大きいと思いますが、撮影者が持つ取材への意欲や、熱量は、「ノートリミングで行くぞ!」という覚悟にもつながっていくはずです。 ◇せっかくの写真やキャプションも、広報誌として印刷されたときに、色のくすんだ紙面になっては、これほど残念なことはありません。今回応募された中でも、その点がめだちました。ほかの市町のものと比べていると一目瞭然です。印刷にもしっかりお金をかけてもらいましょう。そうでなかったら、皆さんの努力の甲斐がない、ということになってしまいますから…。 ◇撮ってきた写真を、ご自分で調整できる方は、できるだけ印刷原稿として完成させてほしいです。逆光で暗く落ちてしまった顔を、無理に明るくしようとすると画質も荒れて、しかも、「のっぺり」したものになってしまいます。表紙に、子どもが被写体になることが多いと思いますが、特に彼らのはつらつとした笑顔を大事に調整してください。様々なソフトが出ていますが、それらをうまく利用して基本的なことはご自分で調整できるようになると、撮ることの楽しみが大きくなります。ぜひ、挑戦してください。 ◇26市町の広報誌を拝見して、コロナ禍で取材も制限される中であっても撮影者の思いが込められた数々の写真が寄せられたことに感動しました。そのどれもが甲乙つけがたく評価の差がありませんでした。 写真そのもののクオリティも高く撮影者のスキルが年々上がっているように思えます。そういった意味ではプロのカメラマンとの差も縮まっていると言えるでしょう。プロカメラマンとの違いは被写体への向き合い方にあります。広報誌の多くの表紙が、どこかで見たことのあるシチュエーションが多いこと。プロのカメラマンは季節を表す被写体が同じであっても、その側面やストーリーを見定め角度を変えた視点でファインダーを覗きます。スナップ写真そのものにプロアマの隔たりはありませんが、プロの場合計画性をもって撮影するケースが多いことにも違いが表れます。 広報写真は、目的を定めてもその場での即効性が求められます。予期せぬ出来事や偶然が重なり思わぬハプニングも多々あります。そんなとき臨機応変に対応できる訓練も必要かもしれません。今回のコンクール作品の中では、その場の臨場感を即座に感じ取り限界まで被写体に近寄ってシャッターを押した写真に力強さを感じました。ほんの一瞬の仕草を見逃さないために、あらゆる角度から撮影を試みることも大切です。人物の場合、被写体の目の表情だけでも違いが現れます。 今回高い評価点をつけた1枚写真は、インパクトの強さに加えこれまでにない構図や、撮影者の意図が伝わる写真を評価しました。表紙の写真であれば、読者を引き込む力のあるもの、臨場感が伝わるものなど印象度の高い写真を上げました。 今後さらなる高見を目指し、思いを込めて楽しみながらシャッターを押していただきたいと思います。 |