県広報コンクールの開催
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〈審査委員〉
読売新聞社静岡支局長 笠原 拓
静岡大学教育学部 准教授 川原��知洋
静岡県広報デザイナー
有限会社アドクック 相談役 前田ミネオ
▼総評
◇広報紙の審査において「企画(記事の切り口の発想)」の評価がやはり重要であると改めて感じました。特に受賞した7市(御殿場市、島田市、御前崎市、静岡市、富士市、磐田市、沼津市)は、特集の「企画」もそうですが、企画に対する「熱量(質と量どちらも)」が非常に高く、審査の評価項目にも「熱量」を追加すべきなのではないか?とも感じるほどでした。 御殿場市は、「ハンセン病を知る」の特集。ハンセン病を知ることで、共生社会のあり方や多様性について改めて考える機会となります。ハンセン病の歴史的な背景と入所者への詳細なインタビュー記事を通して、また中学生の「ハンセン病啓発のための授業」での学びを通して、現在のコロナ禍における「新たな分断」の問題にまで切り込んでいました。記事の切り口だけでなく、特集にかける熱量や構成が秀逸でした。本特集のように、地元に根ざした話題を取り上げることで、私たちの社会全体の共通の課題として広く周知することも広報紙の大事な役割だと感じました。 島田市は、「誰かの視点―まちを色付ける想像力―」という特集。キーカラーの黄色を用い、余白をうまく使い、とても読みやすかったです。「迷い」「習い」「集い」「催い」「伝い」「笑い」と、印象的なワードでページ(タイトル)が構成されていることも特徴でした。インタビューの「共生社会の実現には、自分とは違う誰かの視点に立ち行動すること」という言葉が特に印象に残りました。出来そうで出来ないことかもしれませんが、これを実現させるためのヒントや、行動のきっかけが本特集として組まれていると感じました。 御前崎市は、「大規模災害から生き延びる」といった、防災に関する特集。既存事例からの教訓と、多種多様な多くの方々へのインタビュー記事で構成されている。具体的な行動に移す内容で構成されていました。また、「30ページ」に渡る熱量と完成度の高い特集で、「見出しの統一感と分かりやすさ」、「多彩な写真」と「飽きさせないレイアウト」で最後まで読者を惹きつける工夫が随所に確認できました。 静岡市は、「静岡の偉人とそのゆかりの地」の特集。全国的にメディアで取り上げられる予定の徳川家や渋沢栄一などを中心に、静岡市内にあるゆかりの地を多くの世代が親しみやすい「漫画表現」を用いて紹介しています。また、静岡市歴史博物館のグランドオープンまで「あと1年」という絶妙なタイミングでの周知。中学生にも登場してもらうことで親しみやすい構成となっており、全体的な完成度が高いと感じました。 富士市は、「朱色が走る風景」の地元の岳南鉄道の特集。表紙写真は意図的にぼかし、朱色を引き立てるとともに、幻想的で懐かしい記憶を蘇らせてくれるような構成が印象で、読む前からワクワクしてしまいました。ページ構成も「文章と写真とのメリハリ」があり、最後まで楽しく読める工夫がありました。 磐田市は、「豪雨の爪あと」の特集。読者を怖がらせることなく、しかし特集内容を想起されるような表紙写真の切り取り方が印象的でした。記録写真をもとに、時系列で各地域での被害の様子をまとめています。市民へ、具体的な行動を移すための情報も掲載しており、機能的です。右綴じ(縦書き構成)のお手本のようで、冊子全体が非常に読みやすかったです。 沼津市は、「沼津の花ごよみ」の特集。だんだんと暖かくなる春先の特集としてのタイミングは絶妙です。使用されている写真(表紙と各ページ)も良い写真ばかりでした。関係者へのインタビュー記事も掲載されており、地元に根ざした心温まる記事でした。 その他の多くの広報紙は、その市の時節や社会の時流にあったトピックスをタイミング良く特集されているという印象を持ちました。しかも、単にそのトピックスを担当者の一視点で紹介するだけでなく、様々な立場の関係者へのインタビュー記事が掲載されていました。このインタビューの内容によって、その人(地元の人)の思いが伝わり、そのトピックスがより立体的に、魅力的に見えてきます。コロナ禍が続いており、人に直接会うことは容易ではないと思いますが、トピックスの情報量はコロナ前より劣っていないと感じます。 今年度も広報紙に携わる方々の特集に対する「熱意」や「思い」が伝わる刺激的な審査会でした。地域の魅力的な情報を伝えていただきありがとうございます。 ◇広報紙部門審査に当たらせていただき、これまで携わってきたデザインに再び対峙することができました。デザインの先には必ず目的があり対象とするターゲットが存在します。広報紙で言えば、読者としての市民がいて、どんなに小さな情報であっても必要とする人がいます。編集者が伝えたい情報であってもデザインによって伝わり方に差が出てきます。特集記事であれば、目に止まるキャッチフレーズ、読みやすい文章やレイアウト、配色のバランス、写真やイラストや図版など様々なデザイン要素を複眼的な視野で見定めることが大切です。 今回の審査では、総体的にデザインの完成度が高いことから、企画コンセプトを重点的に取り上げ、デザインとの整合性を優先しました。 20市の広報紙を拝見して共通して言えることは、かつての窮屈なレイアウトはほとんど見受けられませんでした。それは編集者の広報紙に向かう姿勢が、単なる事後の報告書にとどまらず、一般情報誌的な編集デザインへの意識が高まっていると推測します。さらに写真撮影スキルには目を見張るレベルを感じました。 御前崎市の防災特集は、当市が直面している防災の諸問題に徹底した取材内容とレイアウトが目を引いた。広報紙では、様々な情報を平均的に扱いがちですが、一つの特集テーマを様々な視点で構築することで、より深く知識として市民読者に届くのではないでしょうか。 その他にも、市の独自性を活かした特集で、市民の共感を得る内容や現代の社会問題を市民の協力を得て編集するなど、編集者の取材力や情熱が伝わる広報紙と出会うことができました。 デザインは思いやり。どうしたら興味を持ってもらえるか、どうしたら読みやすくなるか、市民読者を思いながら編集に向かっていただければ良い広報紙となるでしょう。 これからの広報紙づくりを楽しんでいただきたいと思います。 |